加島に存在するトロリーバスの停留所案内サインの話です。


トロリーバスは後で詳しく説明しますが、かつて大阪市内に存在した交通機関の一つです。
50年前の1970年に全廃となっていますが、未だに痕跡が残っている場所が存在します
2020年夏頃に壁面トタンの貼り替え(上貼り?)作業が行われたことにより見られなくなったようです。

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モノがこれ。市バス97系統に乗って三津屋停留場で下車、そこから5分ほど歩いた場所にあります。横に住所標が貼っているので場所の隠しようがありません
パッと見古ぼけた交通安全の啓発看板ですが、注目して欲しいのはその下の広告です。よく見ると「トロリーバス」の文字が見えます


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下部の拡大。
記載内容は「地元の繁栄に 大阪中央信用金庫 加島支店 トロリーバス加島町東へ50米」となっています。その後にも何か書いていたような痕跡が見えますが、文字が消え去ってしまっているため判別不能です。
ここの大阪中央信用金庫は平成9年に当時の大阪市信用金庫と合併、現在は大阪シティ信用金庫となっています。
保存された物以外でトロリーバスと明確に表記されているものはここでしか現存が確認されておらず、大変に貴重な看板になっています。


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まず大阪のトロリーバスとは、当時の市電を補完する目的で大阪市交通局が運行していた交通機関で、昭和28(1953)年から昭和45(1970)年まで存在していました。運賃は廃止時で均一30円(小人15円)となっています。

通常のバスがガソリンで走るのに対して、トロリーバスは架線からポールを介して集電し走ることが特徴です。法的な区分では無軌条電車で、鉄道扱いとなっているため普通の自動車免許では無く動力車免許が必要となり、さらに道路交通法の適用範囲から外れているため仮に速度違反をしても警察はそれをしょっぴけない(マジでこういう記録がある)などの違いがあります。
ただし、ポールを下ろして内燃動力(バッテリー)で動く場合は普通の自動車の扱いとなるため、必要な免許も適用される法律も異なります。もっとも、内燃動力を使用してもトロバスの車両は事前に認可が下りているルート以外を走行することは基本違法(廃止後の回送時のみ特例があった)なので内燃に切り替えて気軽にどっかに行くみたいなことは出来ません


大阪市のトロリーバスは1~4号線と8、9号線の6路線(5~7号線は計画のみ)が存在し、このうちこの看板が残っている路線は「1号線」になります。
トロバス
トロリーバス1号線の路線図は以下の通り。
昭和28(1953)年9月1日に開業した最初の路線です。他路線のように地下鉄建設でルートが変更されたり区間運休したりはありませんでしたが、モータリゼーションの波に押し潰されて昭和44(1969)年10月1日に廃線となりました。廃止後は市バスの97系統がこの路線を引き継いでいます。
なお他の路線では昭和43(1968)年にワンマン化されているのですが、この路線と2号線ではワンマン運転が最後まで行われていなかったという違いがあったりします


改めて看板の話に戻ると、この看板が設置されたのは最低でも51年のものとなります。当然、廃止直前にこんな看板を設置するわけがないのでそれより前の看板であることは間違いありません。1950年代に設置された可能性も高く、そうであれば大阪市内でも指折りの古参案内板になります。
さらに最初に言ったとおり大阪にトロリーバスが走っていた痕跡を表記としてしっかり残しているものはここ以外確認されておらず、本当に非常に貴重な看板です。
ちなみにこの看板にある「十三橋警察署」は昭和49(1974)年に東淀川区から淀川区が独立した際「淀川警察署」に名前が変わっており、ここにもかつての痕跡が残っています。
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今後も残るとは思いますが、いかんせん築年数が相当経った一般民家の壁面にあるものなので予兆無く消滅する可能性も少なくありません。行くなら早めがおすすめです。住宅街だから大人しくね
消滅しました


おまけ
交通局ピクト-2
路線図作るときにこしらえたトロリーバスのピクトグラム的な何か。
素材です。使い道があればご自由にどうぞ